世界に
三月
がやってきた!
どこもかしこも祝福の言葉が満ち、笑い声が溢れている。
そんな浮き足立った声の中を、ただ歩き続ける姿があった。
マントは歩くたびにひらりと揺れたが、その瞳は揺らぐことなく前を見据えていた。
(嗚呼)
(お待ちになって)
不意に桜の木がざわめいた。
花弁は無抵抗に風に攫われ、静かに世界を染め上げる。
風は徐々に強く、しかし柔らかに吹き荒れた。
(それはまるで、何かを急かすかのようで)
(嗚呼)
(さようなら)
また、来年